#0110 中国の一帯一路に新たな懸念?2つの海底トンネルプロジェクトに問題か?
今回の3行まとめ!
- 中国出資のフィンランド-エストニアトンネルは頓挫?
- マレーシアのトンネルは汚職騒ぎ!
- 一帯一路への影響はあるか?
2030年以降に開通するとしているこの計画に対して、エストニアの行政大臣が問題視していることをメディアに伝えて波紋となりそうです。
これは、両国が長年かけて計画をしたもので、開通すれば投資の半分は早期に回収できるほどの経済効果があるとされています。
ヨーロッパ全体にも良い影響を与えると、EUからも期待感が高まっています。
(参考)yle 2020/07/31
その一方で、資金の大半が中国から提供され、中国企業が建設を行うことから、安全保障上の問題に発展しかねないとエストニア側は難色を示しています。
プロジェクト開発会社はエストニア側の正式な連絡を待っている状態で、今回のエストニアの行政大臣の発言は最終的なものではないとしています。
一方、マレーシアの前財務大臣リム・グアンエンが、中国が設計や工事を請け負う63億リンギッド(約15億ドル。約1,600億円)の海底トンネルプロジェクトの汚職調査で逮捕されました。
マレーシアでは3月に政変が起き、その時更迭された政権の主要メンバーでした。
マレーシアの反汚職委員会MACC (Malaysian Anti-Corruption Committion)によると、リムが国の反汚職法に関連し、3つの罪状に問われ、別の2件でも逮捕されるとしています。
リムはプロジェクト完了時に請負業者が得た利益の10%を要求したとされています。
リムは罪状認否では無罪を主張しています。
この海底トンネルプロジェクトに関しては、6月末にも港湾委員会の高官が汚職の疑いで拘束されるなど、多くの政治家が調査を受けていました。
しかしこうした動きは、新政権の政敵に対する権限を乱用した調査であり、ねつ造されたものだとして批判の声も上がっています。
編集所感
今回の概要!
- 2つの海底トンネルプロジェクト
- 北欧諸国と中国の関係
- マレーシアと中国の関係
どちらも海底トンネルという、高度な技術と綿密な計画を要するもので、長期間をかけて実現性や経済効果が調査されているため、内容としてはクリーンなものだと思われます。
それでもどちらも反対意見や懐疑的な見方は強く、マレーシアに関しては以前から汚職の逮捕者が出るなどして計画が頓挫する危機におちいったこともあるようです。
また、海底トンネルは巨額の費用がかかるため、資金集めにも苦労しているようです。
そこに現れるのが中国資本です。これは直接的な所有権を得る目的ではないようです。単なる融資ですね。
しかしながらどちらについても中国企業が設計や工事の主幹を握るというところを見ると、中国側の目的はそこにあるのだと思われます。
皆さんは中国に海底トンネルを作る技術力があるのかと疑問に思うかと思いますが、工事実績においては少なくないようです。
中国はご存知の通り国土も広く、近年開発がとても活発なため、トンネル工事の距離、即ち数字上で言えば、圧倒的な実績を誇ります。
海底トンネルに関しても、両方のプロジェクトで工事を請け負うことになる中国鉄道は国内でも実績を重ねていて、それだけを見れば信頼に当たると考えるのも無理はないでしょう。
ただ、トンネルの評価というのは歯科医の治療と同じで、それが本当に成功だったかどうか判るのは数年から十数年、それ以上経ってからです。
当然中国のトンネル工事が完璧なわけではなく、補修工事に迫られている例もあるので、評価は難しいです。
もちろんこうしたことは中国に限りません。どこの国でも同じです。
また、海底トンネルは計画と現実のギャップに悩まされることが多いので、計画自体は完璧に見えても計画通りに行くとは限りません。
フィンランド-エストニアのヘルシンキタリントンネルについては、現在フェリーだと2時間かかりますが、海底トンネルの電車で接続すれば30分に短縮できるとされています。
両国の経済に肯定的な影響を与えるとされています。
今は陸路で迂回するとロシアを経由する必要があり、距離や手間を考えると現在の陸路輸送はまったく魅力的ではないようです。
中国に対する懸念をエストニアの対外情報機関は以前から持っていて、米国の同盟国であることからHUAWEIの5G機器の使用禁止も決めています。
ですので、中国資本に対する強い警戒感があるのは当然のことなのでしょう。
フィンランドと中国はかねてから良い関係を保ってきていましたが、近年では新疆ウイグル自治区の問題や香港の国家安全保障法の問題で関係に変化が見られます。
また、4月に中国が支援したマスクがフィンランドの基準を満たしていなかったこともあり、EU諸国で同様の事態が発生したこともあって、中国への不信感が増しています。
(参考)yle 2020/08/04
ただ、計画中止に舵を切るほどではないようですが。
一方でマレーシアでは海底トンネル事業が計画されているペナン州は、10年以上前から中国系を支持基盤とする人民行動党(DAP)が政権を握っています。
今回逮捕された前財務大臣のリム・グァンエンが2008年から10年間州首相を務め、この計画を実質上主導してきました。
そしてマレーシア政府の財務大臣としてもこの計画の推進に一役買ってきた人物で、その人物が追い落とされたことで中国としてもダメージとなっていることでしょう。
中国が大きく関わっているこのプロジェクトですが、中国メディアは今回の逮捕劇をそれとなくひっそりと報道しています。
反腐敗は中国が推し進めているため賞賛すべき内容なのでしょうが、対象が親中勢力だっただけに、扱いは慎重のようですね。
こちらの工事に関しては既に土地の取得や埋め立てなど、実質上施工が開始された状態ですが、政治の混乱による中断については判りませんね。
プロジェクト自体は巨大で、昨年には紆余曲折の末に承認されたので、このまま進められると思われますが、感染症の影響や財政問題もあって先行きは不透明です。
中国はこれまでマレーシアに大規模投資を行ってきていますし、マレーシアとしては大量の中国人観光客が訪れることもあって、良い関係を築いていきたいようです。
一帯一路に関しても早期に協力を表明して、巨額の投資を呼び込んできました。
一方で今回逮捕されたリム・グアンエンが2018年に中国の銀行から資金を不正に流用したとして巨額のパイプライン契約が破棄されるなど、怪しい動きも多いようです。
まあ、こうした新興国はわたし達が想像する以上に賄賂は政治を動かす常套手段として当たり前のように使われているので、叩けば他にも出てきて、面倒なことになるかもしれません。
ただ、今回は政治闘争も絡んでいるので、こうした告発の信憑性もないというのが問題です。
ただただ混乱しているという事です。
お〆め
計画自体は各国の夢ではあると思うんですけどね。工事では多くの雇用を生むし、開通すれば経済効果も高いでしょうから。
重くて大量のものは依然海路でしょうけど、そうでないものはほとんどトンネル経由の鉄道に取って変わられますね。
ただ、中国への過度な依存を警戒してきた政権が倒れたので、これからどうなるか本当に判りません。
そして・・・
っていうか腐ってはないでしょ?
仕方がないからレモン汁で我慢します。