(し)初めての一人暮らしを始めたとき、
絶対にほしかったものがあるの。絶対に何かわからないと思うけど。
(ゆ)絶対にわからないなら当たらないと思うけど。任天堂スイッチ!
(し)それは今ほしいものだってば。昔はなかったでしょ?
(ゆ)じゃあわかんない。
食器洗い機!
(し)ざんねーん!正解はね、
真っ赤な冷蔵庫。
(ゆ)ああ、確かにしらゆきさんの家にあったね。あの、くすんだ赤とかじゃなくて真っ赤だよね。
(し)そう。ほら。実家だと買い換えても白とかグレーでしょ?だから
一人で住むときは絶対赤い冷蔵庫にするってずっと思ってた。
(ゆ)何か変なところに異常に意気込んだんだね・・・。
(し)それでね、一人暮らしを始めるって決まったときに、たくさん電気屋さんを回って思い描いた通りの赤い冷蔵庫を見つけてすぐに買ったんだ!
(ゆ)あったんだ。新品?
(し)そう。新品。
赤い冷蔵庫が家に届いてとてもうれしかったよ!
(ゆ)へぇ、そうなんだ。で、それが何かあったの?
(し)でね、その届いた日の
夜中に「リリリーン」って鈴の音みたいなのがキッチンあたりから聞こえてきたの。
耳をすまさないと聞こえない小さな鈴の音なんだけどね。
(ゆ)それは
普通に地縛霊じゃないの?
(し)そうかもしれないと思ってね、どこから聞こえるのか探し回ったの。そしたらどうやら
赤い冷蔵庫の中から聞こえてきてたみたいだった。
(ゆ)冷蔵庫の中にスズムシがいたとかいうオチ?
(し)冷蔵庫の中にスズムシがいたらそれはそれで気持ち悪いよね。
(ゆ)しらゆきさん、虫嫌いだもんね。
(し)それでね、ちゃんと聞いてよ。音の出所がわかった途端、
この冷蔵庫は呪われている!と思いこんじゃって、眠れなくなったの。
(ゆ)冷蔵庫の電源抜けばよかったんじゃない?
(し)抜いたら食べ物腐るじゃん!それでね、翌日赤い冷蔵庫を買った電気屋さんに電話して、「鈴の音が聞こえて眠れない。壊れてる。修理してほしい」って連絡したの。
(ゆ)しらゆきさん、そういうのは行動早いよね。すぐ連絡するよね。
(し)そしたらね、電気屋さんがすぐに見に来てくれて、「
あーっ、これは冷蔵庫のモーター音で普通の音ですよ。このサイズの冷蔵庫はどれもこんな音がするんです」って言って帰っていったの。
(ゆ)アレじゃない?一人暮らししたことなかったから冷蔵庫のモーター音聞いたことなかったんでしょ。
(し)どうやらそうだったみたい。で、その時はね「ええーっ!そんなぁ?」って思ったんだけど、プロの人にそう言われたら、なんか急に安心しちゃって、「今日も鈴の音が鳴ってるねー!」って
なんだか子守歌みたいに聞こえるようになって、逆にその鈴の音がいとおしくなったんだよね。
(ゆ)それまた極端だね。っていうかしらゆきさんって寂しがり屋だよね。どちらかというと。
(し)だって初めての一人暮らしだよ。寂しくなっちゃう人結構いるはずだよ!
(ゆ)で、オチあるの?この話・・・。
(し)わたしが言いたいのはつまり、
「苦手」は脳の使い方であっという間に克服できるってこと!
(ゆ)うん。それは一部は同意するね。何かスイッチみたいなのをパチンと反対側に切り替えるだけで気持ちを切り替えたりできるからね。
(し)スイッチ?
(ゆ)任天堂のじゃないよ!!ただ、それにも限界があって、できないものはやっぱりできないけどね。ほら、
ゴキブリを素手で潰すとか無理でしょ?
(し)それは生理的な問題だって!!