#0090 韓国造船も崖っぷち!大量解雇と入金までの持久戦!
感染症による景気減速で世界的な造船不況が続き、各国の造船企業は業界再編で生き残りをかけています。
先日カタール国営石油会社、カタール・ペトロリアムから、100隻規模のLNG船を韓国ビッグ3。
現代重工業、大宇造船海洋、サムスン重工業が、発注権利保障約定書を締結したと発表がありました。
(参考)デイリアン 2020/07/01
総事業額約2兆円規模という超大型受注となります。
韓国政府が造船業を強力にバックアップすることで低価格を実現できることや、
大規模製造施設が整っていて、大型受注に耐えられることから選定されたと考えられています。
しかしながら景気低迷でLNG需要の低下が予測され、カタール政府が発注規模を縮小するという見方もあって安心できる状況ではありません。
2004年には90隻規模となるとされていた事業は、最終的な発注は53隻にとどまりました。
また、低価格受注のため、収益性確保が課題となっています。
一方で、海洋プラント事業は受注が取れず、最大8千人規模の雇用喪失が生まれる懸念が出ています。
(参考)News1 2020/07/01
少なくとも5~6000人規模に及ぶと見られていて、地域経済への打撃も懸念されます。
現在海洋プラント事業は追加受注が受けられず、このままでは2022年の引渡しを最後に余剰人員が出てしまうということです。
それ以外の中堅企業は希望退職を募集するなど、企業存続のために死力を尽くしている状況です。
(参考)釜山日報 2020/06/29
編集所感
韓国では業界第一位の現代重工業が大宇造船海洋を統合することが決まっていますし、中国でも世界2位のCSSCと世界5位のCSICが統合するなど、生き残りをかけた再編が行われています。
日本でも国内一位の今治造船と、2位で昨期大赤字を出したのジャパンマリンユナイテッド、通称JMUが資本業務提携すると報じられました。
また、国土交通省が「オールジャパン構想」なるものを打ち出しているようですが、造船所が各地に点在していることから効率性の面では中国や韓国には劣るようですね。
中国や韓国は一つの造船所にドックがいくつもあるため、ロット生産が可能とのことですが、日本は中小の造船所だらけでそういった対応ができないとのことです。
カタールのLNG船受注はそういった構造的な問題や、日本がカタール以外からLNGを大量輸入しているということが問題視されるなど、不利な材料が揃っていたそうですね。
中国や韓国が政府主導で造船所を巨大化させていった一方で、日本はオイルショック後に行った設備制限がきっかけで、散り散りになって生産能力と競争力が激減してたということです。
今後は環境規制強化による建て替え需要が見込まれるとされていて、これが日本にとっては狙い目とのことです。
さて、大型受注で大喜びの韓国ですが、これは毎年ある一定量の仕事量が確保されたというだけで、業績回復のきっかけにはならないということですね。
例えば毎年10隻を引き渡す場合、引渡し時に支払が行われるわけですから、最初の引渡しまでは耐えなければなりません。
現状ですと、政府支援も必要となるかもしれないようですね。上半期の受注不振が大きく響いているようですから。
サムスン重工業や大宇造船海洋の大規模な人員削減。これは主に協力会社人員が削られるとのことですが、これもその時まで耐え抜くための方策のようです。
ただ、日本海事新聞によりますと、韓国側には損益分岐点ギリギリの額が提示されたとのことで、大きな利益も出せないという見込みのようですね。
景気状況もこのように先が見通せない状況ですから、これで引渡しを延ばされてしまうと赤字になってしまう可能性もあります。
わたしも先日は見出しだけをちらっと目にして、ああ韓国の造船は景気の良い話で羨ましいと思っていましたけど、それほど喜べる状況ではないようですね。
またこれも業界全体の話なんですけど、鉄鉱石の価格が短期間で急激に上がっているようで、造船企業にとっては利益を大幅に減らす原因となっているようです。
(参考)アジア経済 2020/07/03
先ほどの話と関連しますが、ギリギリの額で受注しているとすれば、この鉄鉱石の価格上昇の影響を受けて収益性が大幅に悪化する可能性が高いというわけです。
そうなると価格破壊に挑んでいる中国製の鋼板なども選択肢となるわけですが、これはかえって韓国の鉄鋼業界を苦しめる結果となりますね。
日本は韓国が政府の補助金に支えられて低価格受注を行っているとして、WTOに提訴しているわけですけれども、
韓国側は政府系金融機関の商業的判断として、政府の関与を否定していますね。
このことが影響しているかどうかは分かりませんが、韓国政府は造船ビッグ3に対する感染症関連の特別雇用支援対象から外すと発表しています。
理由はカタールの受注があったからとしていますが、それまでに耐えられるかどうかの瀬戸際なんですけどね・・・。
今回はこうした緊急事態なので、支援をしてもWTOで不利になったりしないとは思いますが、日本からこの点を指摘されて不利になる可能性はありますよね。
中国の低価格攻勢で受注減や業績悪化に繋がったわけですけれども、ここまで何とかこの大きな規模を保ってきた韓国造船産業もさらに苦しい状況ですね。
雇用維持も重要ではありますけれども、経済自立して収益を上げられない以上、縮小化していく運命にあると思います。
一人一人の生活を考えると難しい判断ですけど、次への第一歩をいつまでも踏み出せず、支援金や不公正な政府発注に支えられ続けるというのもどうかと思います。
労働者団体が強いという影響もあってか、こうした思い切った決断ができずにずるずるといってしまうというのが韓国経済の良くない点だと思います。
大宇造船海洋も、経済への影響なども考慮して生存させたようですけれども、思い切ってパタンと潰すという、経済界の自然の摂理にもう少し任せてみてはとも思います。
日本政府が不適切というのもわかる気がします。あまりにも多いですもん、政府系の大企業支援が・・・。
赤字を出して法人税を払わず、血税で生きていくわけですよ。そりゃあ国民の不満も高まると思いますけど・・・。
お〆め
これも一次請け二次請けとあるようなんだけれども、それと地域経済ですよね。造船所の周りの経済が壊滅的な打撃を受けます。
さらにその地域の土地価格も急落して、ゴーストタウン化してしまう可能性が非常に高いです。
そして・・・
なんかこれ、ヒートテックなんじゃないかと思います。多分冬だとちょうどいいんですよ。