#0088 香港の夢は幻に。中国一国二制度事実上終了。
「香港特別行政区における国家安全保障の維持に関する中華人民共和国の法律」
通称”香港国家安全法”の二度目の審議が6月30日に行われ、全会一致でを可決しました。
習近平国家主席はそれを発表する主席令に署名しました。これによって発表日より即時に効力を発しました。
中国政府は、香港の国家安全保障を維持するための香港の法制度と実施メカニズムの確立と改善に関する重要なタスクだとしています。
これは香港を救い、香港を安定させ、香港の「一国二制度」の慣行を安定させるための主要な手段だとしています。
6月30日にスイスジュネーブで行われた第44回国連人権理事会で、キューバが53カ国を代表して共同声明を発表し、香港の国家安全維持に関する法律を支持したと中国メディアは報じています。新華社通信 2020/07/01
これに対して日本やイギリス、フランス、ドイツなど27カ国は強い遺憾を表明しました。このことを中国メディアは報じていません。
中国人民解放軍は、香港からボートによって市民らが逃亡するのを阻止する訓練を陸海空軍合同で行い、この映像を公開しました。SCMP 2020/06/30
香港国家安全法は国の分裂、国家政権転覆、テロ行為、外国勢力との結託などを処罰の対象としていて、これにより香港における反政府行為を抑制するとしています。
手配対象になった人物が密航などを通じて香港を脱出する可能性があるため、警告の意味も込めて公開されたものと思われます。
日本の新聞各社は今回のことを大々的に取り上げ、事実上中国の一国二制度が有名無実化したなどとして中国政府を徹底的に批判しました。
産経新聞は黒の背景に白文字で「香港は死んだ」という見出しで、日本が米英両国などと協力して対中国制裁を断行しなければならないと促しています。https://bit.ly/3dOkfKT 産経新聞 2020/07/01
編集所感
思えば一国二制度などというものは、香港にとって幻でしかなかったのだと思います。
そして自治権というのは武力の前にはどうにもならないですね。
それが台湾と香港の根本的な違いであり、民衆の力だけでは強大な独裁国家の力には敵わなかったということです。
ただ、この香港の夢物語は屈折した歴史が作り上げたものでもあったわけです。
事の発端は英国が中国から大量の紅茶、陶磁器、絹製品を輸入したことで、莫大な貿易赤字を抱えることとなってしまったことにあると思います。
英国は中国、当時の清朝が欲しがるものをほとんど持っておらず、国内の銀が大量に流出することとなります。
英国はこれを解消するために仙人の肖像画などを輸出するも失敗。次にポルノ画を輸出するもこれまた失敗。
しかしその時に作った流通網を通じてインドで栽培されたアヘンを流通させ、利益を上げることに成功します。
清朝はアヘンの輸入に気付いてこれを阻止するも、自由貿易の精神に反すると反論。
ヨーロッパでは中国は野蛮な国家だとしてメディアが書きたてます。
清朝は取り締まりを徹底的に強化してアヘンの焼却、商人の追放で徹底抗戦。
何とか世論を味方に付けた英国は戦争に踏み切り、結果として清朝は大敗。1842年の南京条約で香港は英国の永久領土となります。
日本が大戦中に占領したものの、終戦後は英国に返還。
1898年に結んだ99年間の租借という不平等条約を根拠に1997年まで英国領という状態が継続。
同年7月1日に中国へと返還されたわけです。
元々は英国の目に余る横暴によって割譲されたわけであり、中国が共産化するなかで、その影響を受けず、資本主義や自由民主主義の恩恵を受けたわけです。
中国共産党が建国を宣言した49年。立場がこの時に明確に逆転したと言えるでしょう。
共産党が最悪のデタラメ政治を行う中で、香港はその地獄から幸か不幸か逃れることができたわけです。
英国統治下の香港は民主主義を体感し、これが永遠に続いて欲しいと思ったことでしょう。
1984年の中英共同宣言では、返還後50年間は社会制度を変えないことで合意しています。
今の一国二制度というのはこの合意を守るための苦肉の策とでも言いましょうか。中国としてはやむなく維持し続けていたわけです。
どのみち2047年に中国共産党政府が存在していれば、香港の民主化の夢は断たれたわけです。
それが残念ながら、27年も早まったということです。
しかし中国共産党のことを念頭に置けば、香港の民主化などどだい無理な夢物語に過ぎないわけです。
中国共産党が最も恐れているのは米国ではなく国内の民衆蜂起です。
それを起こさないために情報統制や反日教育などありとあらゆる愚民政策を行なっています。
世界が見え、中国共産党の真実が見える香港は中国にとって脅威でしかありません。
この脅威をいかに無くすことができるか。ある種の中国共産党の命題ではありましたが、国際社会の目がそうやすやすと中国の自由にさせませんでした。
しかし習近平は違いましたね。国内世論を誘導し、増大した国力を持って民主主義が不完全な国や共産主義国家、
経済属国化している国を味方に付けて堂々と中国の本音を叩きつけたわけです。
これまでの中国ができなかった、いわゆる欧米民主主義国家らに対して、自国の当然の権利だと主張し、彼らの主張を退ける決意をしたわけです。
報道の通り、ある種の成功を収めたといっていいでしょう。
こういう言い方は議論を呼ぶことと思いますが、香港は元あるべき場所に引きずり込まれたというわけです。
英国によって様々な意味で分断され、独立、自立を夢見てきた香港の歴史は事実上終了したと言えるでしょう。
習近平は50年の約束を表面的には守っているという体裁で、半分の期間で思うがままにしたわけです。
わたしはこれは逃れられない結果だとしてあきらめています。香港がこれまで通りの香港でいることは不可能でしょう。
しかしながら、現代社会における中国のこうしたやり方は、世界には極めて奇妙に映ったことでしょう。
共産主義国家が民主主義を否定した、こう捉えるべきだと思います。
日本政府は欧米諸国と共に先陣を切ってこれを徹底批判しました。
日中首脳会談はお流れですね。だんまりの韓国は中国との首脳会談は年内ですか?
中国共産党崩壊を願うわたしとしては、この香港の偉大なる犠牲が、中国共産党と世界の戦いののろしになることを願います。
そして最終的には、独裁国家が崩壊し、中国にも民主化の風が吹き荒れる時代が到来する。それに繋がっていけばと強く願います。
最後に。今回はこうして香港の民主化が取り上げられていますが、被害者は香港だけではありません。
中国全土が、この共産党支配から逃れ、人権を取り戻すことができる時代がこなければならないのです。
それこそが本当の解放です。
お〆め
そうでなければ経済植民地化してしまいます。